「充電させてもらえませんか」
「少しでいいから、充電させてもらえませんか」。
1on1相談で、ビジネスケアラーの方からよく聞く言葉です。
朝は親の様子を見てから出勤し、日中は仕事、夜と週末は介護。
気がつくと、自分のための時間が一日もない。
そんな毎日が続くと、心のバッテリーは少しずつ減っていき、やがて空っぽになります。
この記事では、仕事と介護を両立している方が、心が空っぽになる前に休息をとるための方法と、使える制度をまとめました。
休息をとれているビジネスケアラーは4人に1人
鎌倉文庫の1on1相談に来られた方に、まとまった休息をとれているかを伺いました。
とれていると答えた方は、145人中36人(24.8%)でした。
ここでいう『まとまった休息』とは、介護も仕事もない日が月に丸1日以上あることです。
- 調査対象:鎌倉文庫の1on1相談を利用したビジネスケアラー145人
- 調査期間:過去3か月(2026年7月〜9月)
- 調査方法:相談時の聞き取り
つまり、4人のうち3人は、休めないまま仕事と介護を続けています。
「自分だけが休めていない」と感じている方も多いのですが、実際には多くの方が同じ状況にいます。
休まずに走り続けると何が起きるか
介護は、いつ終わるかわからない長い道のりです。
休まずに走り続けると、次のような変化が少しずつ現れます。
- 眠っても疲れがとれない、朝起きるのがつらい
- 仕事でミスが増える、集中が続かない
- 親にきつい言葉を言ってしまい、あとで自分を責める
- 好きだったことに興味がわかなくなる
こうした状態が続くと、「もう仕事を辞めるしかない」と思い詰めてしまいがちです。
けれども、介護離職をすると収入が減り、社会とのつながりも細くなります。
結果として、介護の負担がかえって重くなることも少なくありません。
休息は、わがままではありません。
仕事と介護を長く続けるための準備です。
休息をとるために使える介護サービス
介護する家族が休むために、介護サービスを使うことを「レスパイトケア」といいます。
レスパイトとは「一時休止・息抜き」という意味です。
親のためだけでなく、介護する人が休むためにサービスを使ってよいのです。
| サービス | 内容 | 休息の使い方 |
|---|---|---|
| ショートステイ | 施設に数日〜1週間ほど泊まる | 週末や連休に、まとまった休息をとる |
| デイサービス | 日帰りで施設に通う | 利用日を増やしたり、時間を延ばしたりして、平日の自分の時間をつくる |
| 小規模多機能型居宅介護 | 通い・泊まり・訪問を同じ事業所で組み合わせる | 急な残業や出張のときにも、泊まりで対応してもらいやすい |
| 訪問介護 | ヘルパーが自宅に来る | 朝夕の身支度や食事を任せ、自分の負担を減らす |
利用の回数や組み合わせは、担当のケアマネジャーに「自分が休める日をつくりたい」とはっきり伝えると、ケアプランに反映してもらいやすくなります。
まだ要介護認定を受けていない場合は、親の住む地域の地域包括支援センターに相談するところから始めましょう。
会社の制度を使って休む
育児・介護休業法では、介護をしながら働く人のための休み方が決められています。
会社の就業規則に書かれていなくても、法律にもとづいて使えます。
| 制度 | 日数 | ポイント |
|---|---|---|
| 介護休暇 | 対象家族1人につき年5日(2人以上なら年10日) | 時間単位でも取れる。 通院の付き添いや役所の手続きに便利 |
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日(3回まで分割可) | 雇用保険から介護休業給付金(休業前賃金の67%)が出る |
| 時短勤務などの措置 | 利用開始から3年以上の間で2回以上 | デイサービスの送迎時間に合わせて働ける |
| テレワーク | 会社の努力義務 | 通勤時間の分を、休息や介護にあてられる |
介護休暇は、2025年4月から入社6か月未満の人も取れるようになりました。
また、介護休業は「自分が介護をする期間」というより、「介護の態勢を整える期間」として使うのがおすすめです。
詳しくは、次の記事もご覧ください。
参考:厚生労働省 「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」
『みかづき』が教えてくれる、立ち止まる意味
森絵都さんの小説『みかづき』は、昭和から平成にかけて塾の経営に情熱を注いだ家族を、三代にわたって描いた物語です。
登場人物たちは、教育への思いが強いあまり、走り続けてしまいます。
その姿からは、働きすぎることの代償と、ときに立ち止まることの大切さが伝わってきます。
満ちていない三日月にも、三日月なりの美しさがある。
完璧でなくてもいい、という気づきを与えてくれる作品です。
仕事も介護も、全部を満月のように完璧にこなす必要はありません。
欠けている部分は、介護サービスや会社の制度、周りの人の力で補えばよいのです。
完璧主義はビジネスケアラーの場合は破綻するでしょう。
よくある質問
Q. 親をショートステイに預けて休むのは、親に申し訳ない気がします。
A. 介護する人が倒れてしまうと、親の生活も立ち行かなくなります。
ショートステイは、親にとっても新しい人と話したり、生活のリズムを整えたりする機会になります。
罪悪感を持つ必要はありません。
Q. 介護休暇と有給休暇は、どちらを先に使えばよいですか?
A. 介護休暇が有給か無給かは、会社の就業規則で決まります。
無給の会社なら、有給休暇を先に使う方が収入は減りません。
まずは就業規則を確認しましょう。
Q. 会社に介護のことを話すと、評価が下がりそうで不安です。
A. 2025年4月から、会社は介護に直面したと申し出た社員に、使える制度を個別に知らせることが義務になりました。
一人で抱え込まず、まずは人事や上司に相談してみてください。
Q. 休む時間がとれても、気持ちが休まりません。
A. 休息には、体を休めることと、心を介護から切り離すことの両方が必要です。
短い時間でも、本を読む、散歩をするなど、介護と関係のないことに集中する時間をつくってみてください。
まとめ:心が空っぽになる前に、休息を予定に入れましょう
- 休息をとれているビジネスケアラーは、4人に1人しかいません
- ショートステイやデイサービスは、介護する人が休むためにも使えます
- 介護休暇・介護休業・時短勤務など、会社の制度は法律で守られています
- 完璧を目指さず、欠けた部分は周りの力で補いましょう
「何から始めればいいかわからない」という方は、鎌倉文庫の1on1相談をご利用ください。
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